ID 2543
ユニット名 【羽化する炎】シセリス
CV 山岡 ゆり
レアリティ ☆6
最大Lv 99
タイプ ソーサラー
属性
HP 6005 2000 8005
攻撃力 2490 860 3350
防御力 2035 600 2635
スピード 2337 710 3047
リーダースキル 銀狼との絆
[火属性かつ2回行動]持ちユニットの攻撃力を50%アップ
フォーススキル1 ムルトゥス・フランマ
Lv. 10 火属性の200%単体攻撃。防御力無視。敵が状態異常なら威力4.0倍。
CT 4
フォーススキル2 イグニス・ムルタ
Lv. 10 火属性16%の16~20回連続攻撃。超高確率呪い。発動時、味方単体に3ターン毒を付与。
CT 3
特殊能力 2回行動[確定] / 樹属性耐性 / [滅殺]ランサーキラー
主な入手方法 幻獣契約
進化・契約前 【蝶の姫君】シセリス
通常進化 【仄光の女王】シセリス
進化素材 大帝粒×90、紅帝石×30、紅帝晶×15、100000ゴルド
幻獣契約1
契約素材
幻獣契約2
契約素材
幻獣契約3
契約素材
幻獣契約4
契約素材
幻獣契約5
契約素材
実装日 2020年5月7日
ユニット紹介 女王に即位してしばらくした頃。
シセリスはある部屋の扉の前で固唾を飲んでいた。

そこはかつて父が執務室として使っていた部屋だ。
父への罪悪感をありありと刻みつけられた場所。
その苦い記憶とかつての罪悪感からか
父が亡くなった今もなお、踏み入れられない場所。

父の執務室には政務に役立つ書類が
眠っているかも知れない。
だが、どうしても入る勇気が出なかった。
即位したばかりの頃は、目まぐるしい日々を言い訳に
幾度も後回しにしてきたのだが、
ついに此処に入らなければならない時がきた。

本心を言えばなるべく入りたくない場所である。
だがいつまでも逃げるわけにはいかない。
女王となったシセリスには立て直すべき国がある。
父と母が愛し、残していった国を守る責務がある。
不穏な動きを続けるエリド王国を
同盟国とともに牽制するためにも向き合わなければ。

『入らないのか?』

背後からかけられた声にシセリスの肩が跳ねる。
聞き覚えのある声だ、まさか、と振り返ると
かつて自分を救ってくれた獣人の少年が佇んでいた。
ロアルさん、どうしてここに? と声が溢れる。

『応接間に通されたけど、
 あんたが来る気配もないから
 勝手だけど匂いをたどってきた。』

闇夜に灯火。一筋の光明が差し込む。
少年がまるでピンチに駆けつけた騎士に見えた
シセリスは思わず少年の手を握りしめて懇願した。
執務室に一緒に入ってくれ、と。
この世の終わりのような顔で懇願するシセリスの
気迫に少年は目を丸くして思わず承諾した。

心強い援軍を得てシセリスは
取っ手を握る手に力を込めて扉を押す。
重たく思えた扉は小さく
軋んだだけですんなりと開いた。
誰もいないとは知りつつも、
中の様子を伺いながらそろりと入室する。
その様子は威風堂々たる女王とは名ばかり、
まるで父親に叱られるか心配する子供のようだった。
背中で扉を閉め、部屋の中を眺めながら歩を進める。

執務室は綺麗に整頓されていた。
侍女達が毎日掃除をしていたことは知っていたが、
記憶の中の本や書類が散乱した執務室からは程遠い。
部屋の壁は本棚で埋め尽くされており、
中央に主を亡くした机がぽつりと鎮座している。
机上にはペンにインク、生前読んでいたと思われる
本が積み重なったままだ。
閑寂な執務室に二人分の足音だけが響く。
以前の執務室には暗く押しつぶされそうな
空気が漂っていたが、記憶違いだったのではと
疑いたくなるほどとても静謐な場所だった。

『で、何を探してるんだ?』

呆けた顔で執務室を見渡すシセリスに
少年が声をかける。
しまった、彼を待たせていた。
少年に謝ってから父の机に駆け寄る。
確かに引き出しの中に仕舞ってあるはずだ。
一番上の引き出しを開けると、
題名が記されていない革表紙の本を開くと
懐かしい父の文字で何か記されている。

”イレーネが死んで2年が経った”

その文章を目にしたシセリスは息を呑んだ。
胸が、喉が一気に締め付けられる。
これは、父の日誌……だろうか。
本を持つ手が小さく震えた。
記憶の中の重い空気がじわじわと体に伸し掛かる。
暗い空気が体中を締め付け
ふいに本が視界から消えた。
少年がシセリスの手から本を取り上げて言った。

『あんたの心の準備ができた時改めればいい。』

震えを抑えようと両手を強く握りしめる。
一息ついて、気持ちを落ち着かせた。
少年が自分を案じて言ってくれたのだと理解はでき
る。
だが、目を反らすわけにはいかない。
初めて魔術を披露した時、遊学している時、
機会はいくらでもあった。
父と一度でも本音で向かい合えばわかり会えたかも
知れない。父もシセリスもずっとそれを避けていた。
目を背けた結果どうなったか語る必要もない。
もう目をそむけない、もう避けないと
この執務室の扉を開く時に決めたのだ。
自分を案じて言ってくれた少年に礼を述べて
手を差し伸ばす。

少年は一瞬悩んだものの、シセリスの目を見て
意思を曲げないことを確認すると本を差し出した。
執務室から出ようとする少年をシセリスが呼び止め
る。
できれば、ここにいてもらえないだろうか。
遠慮がちに告げるシセリスに少年は何も応えず、
隣に立ち机に寄りかかると目を閉じた。
手はもう震えていない、大丈夫。
シセリスはゆっくりと表紙を開いた。

日誌には父の幼少期から青年期、
父の半生が事細かに記されていた。
そして母と出会い。
日誌に綴られた母への愛の言葉は
実の娘であるシセリスが顔を赤らめるほどだ。
母との結婚、シセリスの誕生そして母の死。
それまでは明るい感情が多かったというのに、
母の死以後、暗い感情が多く記されていた。
悲観的で空虚で暗澹たる感情と黒いインクが
相まって読み手の心にまで滲んでくる。
シセリスが遊学した後は日付のみ記された
空白のページが数枚続いた。
それはまるで父の心の中の空白を表すようだった。
最後まで空っぽだったのだろうか、
孤独だったのだろうか。でもせめて、
父の心を安らかせる何かがあってほしいと
懇願する気持ちでページをめくると、
ある日付のページの端に小さく一言、
こう記されているのを見つけた。

”おめでとう”

息が止まりそうになった。
それは母の好きだった白い花が咲き乱れ、
蝶が舞う春の季節。母を死の運命へ確定させた日。
シセリスの生まれた日だ。
ぽたり、と涙が落ちてページに吸い込まれていく。
幼いあの日、この執務室で蓋をした感情が
隙間から溢れようとしていた。
父はどんな気持ちでこの言葉を書いたのだろうか。
それを少しでも読み取りたくて、
父の文字を指でそっとなぞった。

あの日、感情のまま泣き叫んでいれば。
傷つくことを恐れず父と向き合っていれば。
父を失わずに済んだのだろうか。
普通の親子のように過ごせる未来が
あったのかも知れない。
そんなことを、今更言っても仕方ないけれど。

『あんたは本当、
 まっすぐ傷つく方法しか知らないんだな。』

少年が零した言葉にシセリスは涙に咽ぶ。
シセリスの涙が止むまで少年はその場に留まった。

執務室に暖かな春の日差しが降り注ぐ。
奇しくも女王に即位したシセリスの
生誕祭を目前に控えた日の出来事だった。

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